オフィスエリア・再開発エリア

鉄道会社ごとにみる再開発事業の特徴や戦略

2021.08.11

東京を中心に各地で進む再開発ですが、その多くは鉄道会社が主導して行っています。

鉄道会社のビジネスモデルとして、都心部のターミナル駅の開発、リゾート開発、宅地開発が上げられますが、沿線人口と新規開発住宅地の減少傾向のなか、街づくりを通した新たな価値の創造が求められています。

本記事ではそんな鉄道会社ごとによる開発にスポットを当てて、沿線の特徴や具体的な開発内容に触れていきます。

 

東急電鉄

東急電鉄は東京、神奈川の主要都市を結ぶ大手私鉄です。
都市開発に定評のある企業でとして名高く、多くの開発を成功に導いてきた実績があります。

①沿線の特徴・主な路線

東急線は多くの人にとって、生活の基盤となるベッドタウンと都心部をつなぐ役割を果たしています。

東横線や田園都市線を基軸として大井町線、池上線、多摩川線、世田谷線などの路線が都内城南地区へと伸びています。

世田谷のローカル臭を色濃く残した世田谷線なども人気ですが、田園都市線の二子玉川や東横線の中目黒など、居住者にとってはステータスとなるような街が多く、ブランドが確立された路線と言えるでしょう。

 

②主な開発エリア

前述の通り東急は都市開発に定評のある企業ですが、中でもダイナミックな変化が起こったのが渋谷です。2000年初頭からじわじわと再開発の進む渋谷ですが、「100年に一度」とされる大規模な開発により全く新しい姿に生まれ変わりました。

ビットバレーと称され、Googleを中心に数々の有名IT企業のオフィスが集まる渋谷ですが、オフィスビルや周辺施設は東急によって手がけられています。

JRや京王線も乗り入れる渋谷ですが、やはり再開発といえば東急のイメージが強いでしょう。

 

③再開発エリアの主な商業施設やビル

東急グループは「渋谷ヒカリエ」、「渋谷ストリーム」など渋谷駅を中心に多くの開発を手掛けてきました。

周辺には三井不動産の手掛けるミヤシタパークや2020年に新たに生まれ変わった渋谷PARCOなど他の大手企業も開発に参入しており、群雄割拠の状態ですが、やはり東急の手掛ける開発のインパクトが際立っています。

 

 

小田急電鉄

小田急は、新宿を起点に、箱根の玄関口である小田原までを結ぶ「小田原線」、湘南エリアに至る「江ノ島線」、多摩ニュータウンに至る「多摩線」の3路線をカバーしています。

沿線には大きな街がところどこに点在しており、買い物などの利便性が高いことに加え、閑静な住宅街も多いので、居住者の多様なニーズを満たしています。

①沿線の特徴・主な路線

小田急線沿線の特徴として、都心部へ出なくとも充分に楽しめるスポットが多いことです。

都心部からアクセスの良いビーチエリアである片瀬江ノ島まで一本で行けることに加え、ロマンスカーを利用すれば箱根などのメジャー観光地へ1時間ほどで到着します。

 

②主な開発エリア

小田急電鉄の開発といえば、かつて開かずの踏切が問題になった下北沢の開発が有名です。

「下北沢地区上部利用計画」に基づき、京王電鉄とともに下北沢エリア一帯の再開発を手掛けました。東北沢駅、下北沢駅、世田谷代田駅と3駅すべて線路を地下に移す大規模な工事のため、長年、工事をしていた印象が強い人も多いはずです。

線路を地下化したことにより生まれた新たな土地は全長約1.7kmに及びます。

この数字を見るだけでも、下北沢周辺の再開発が大きなプロジェクトであることは想像に難くありません。

 

③再開発エリアの主な商業施設やビル

下北沢一帯の再開発にともない小田急線「東北沢駅」〜「世田谷代田駅」の線路跡地に誕生した「下北線路街」は下北沢らしいユニークな施設を中心にレンタルスペースも用意されています。
レンタルスペースは個人・企業問わず、店舗のプロモーションなどイベントを行いたい人へ貸し出されます。

まさに皆で新たな下北座をつくるような感覚で、日々街が生まれ変わっていくことを実感できるでしょう。

 

 

西武鉄道

西武鉄道は、池袋・新宿を拠点に、東京都北西部と埼玉県南西部を結ぶ大手私鉄です。西武ライオンズのオーナー企業として知られる埼玉の顔ともいえる大企業です。


出典:「鉄道チャンネル」 西武鉄道 所沢駅に新ランドマーク「グランエミオ所沢」1期がきょう3月2日開業

①沿線の特徴・主な路線

西武鉄道は東京都の中核を担う新宿や池袋といったターミナル駅と埼玉の主要都市をつなぐ役割を果しています。

池袋と吾野とを結ぶ池袋線と、西武新宿と本川越とを結ぶ新宿線が二大幹線として存在し、多埼玉県民の主要な交通手段です。

派手さこそありませんが、西武線沿線は緑豊かな住環境の良い街が多く、落ち着いた暮らしを望む人々から支持されています。

 

②主な開発エリア

西武鉄道が特に開発に力を注いでいるのが本社のある所沢です。

ターミナル駅へのアクセスが良く、宅地開発が進められてきた所沢ですが、近年は商業施設の開発も進み、その地価は上昇を続けています。

非常に利便性が高く、住みやすい街にも関わらず、どこか野暮ったいイメージが先行していた所沢がどのように変化していくか注目が集まります。

 

③再開発エリアの主な商業施設やビル

2020年に全面開業した所沢の新たなランドマーク「グランエミオ」は西武鉄道の子会社が手掛けた商業施設です。

同社の進める「所沢駅東口駅ビル計画」の一環として誕生したグランエミオ所沢は大泉学園に続く2店舗目です。

著名セレクトショップや人気飲食店の誘致に成功し、洗練されたイメージから多くの若者も訪れています。

 

 

京王電鉄

京王電鉄は東京の副都心・新宿と多摩地域の主要都市である八王子を結ぶ路線で通勤・通学へ多くの人が利用しています。

2018年より営業を開始した京王ライナーに加え、有料将来的にはリニア中央新幹線とも連絡予定です。


出典:京王電鉄事業フィールド

①沿線の特徴・主な路線

新宿、渋谷といったメジャーな街から下北沢、吉祥寺などもカバーしており、都心からアクセスの良い高尾山も京王線沿線です。

良い意味で雑多な街が多く、ある意味、最も東京らしさを味わえる線といっても過言ではないでしょう。

 

②主な開発エリア

京王電鉄の再開発エリアは新宿などのターミナル駅の開発に目が行きがちですが、見落とされがちなのが調布の再開発です。もともと子育て世代を中心に人気の街でしたが、再開発によってその価値が見直されています。

他にも「連続立体交差事業」と銘打ったプロジェクトが2021年現在も進行中で、2022年末の完成を目指しています。

7つの駅を高架化、明大前駅・桜上水駅・千歳烏山駅がホーム2面で線路が4本という構造の駅になる予定です。

結果として25箇所あった踏切がゼロになるので、朝夕の混雑が緩和される見込みです。

 

③再開発エリアの主な商業施設やビル

京王電鉄が再開発を主導した調布のランドマークとして誕生したのが複合商業施設「トリエ京王調布」です。

都内最大級のシネマコンプレックスの「イオンシネマ シアタス調布」や大手家電量販店の「ビックカメラ」に加え、関東最大規模の「成城石井」、調布市出身・在住のオーナーが手掛ける「猿田彦珈琲」などがテナントとして軒を連ねています。

再開発により利便性が向上しましたが、郊外ののどかな雰囲気も健在で調布の人気は増す一方です。

 

 

東武鉄道

東武鉄道は東京都・埼玉県・千葉県・栃木県・群馬県の1都4県に鉄道路線を有する私鉄です。

関東1の路線距離を誇る歴史ある企業として認知されています。

①沿線の特徴・主な路線

1都4県を跨いで路線があるため、様々な人が利用しますが、東京下町の浅草をはじめ栃木の日光や宇都宮といった日本を代表する観光地へアクセスできます。

都心部に駅がないので、あまり馴染みのない人もいるでしょうが、どこかノスタルジックな雰囲気を感じる車両は多くの鉄道ファンの心を掴んで離しません。

 

②主な開発エリア

観光地を中心に数々の開発を行ってきた東武鉄道ですが、注目すべきは墨田・台東エリアの開発でしょう。同エリアは2012年のスカイツリーの誕生を皮切りに開発が進んでいます。

下町の風情ある景観はそのままに新たなランドマークを目指し、さらに幅広い年代が訪れる街へと変貌を遂げました。

 

③再開発エリアの主な商業施設やビル

開発のシンボルとして認知されている東京スカイツリーは2021年現在、世界で最も高い電波塔です。

東武鉄道は周辺一体の開発を担っており、周辺区域は「東京スカイツリータウン」と称され多くの観光客が訪れています。

スカイツリーを中心に東京ソラマチ、すみだ水族館などが複数施設が隣接しているので、ショッピングなどに限らず、訪れる人の目的は様々です。

 

 

京浜急行

京浜急行と言えば、東京の空の玄関口である羽田空港へのアクセス路線として有名です。

街づくりにおいては訪日外国人のファーストインプレッションを決める重要な役割を担っており、今後の動向にも注目が集まります。

①沿線の特徴・主な路線

品川や羽田といった国際交流拠点を有することが大きな特徴です。

また京急線の最南端には三浦半島内部の三崎口があり、観光スポットとして有名です。

現状は期間産業の衰退により、人口減少が止まらない三浦半島ですが、「都市近郊リゾート三浦の創生」を掲げ、新たな観光の拠点づくりを進めています。

 

②主な開発エリア

京浜急行の主な開発エリアといば品川駅でしょう。同駅周辺ではJR東日本による高輪ゲートウェイ駅の新設など、交通インフラの整備が行われています。

そんな品川ですが、京浜急行も再開発における大きな役割を担っています。

具体的にはトヨタ自動車とともに行う大規模施設の跡地の開発や、空港利用の需要増加にともない、重要性が高まる泉岳寺駅周辺の開発です。

 

③再開発エリアの主な商業施設やビル

2021年3月末で営業を終了した「シナガワグース」は京浜急行の所有物です。同社の顔ともいえるホテルだった「パシフィックホテル」として開業したビルが50年の歴史に終止符を打ちました。

そんなシナガワグースですが、跡地となる約2万5000㎡の敷地に最新鋭の設備を備えたビルが建設される予定です。

これは京急がトヨタ自動車と協業で行う品川再開発の一環で、2024年以降、リニア就航予定の2027年までの完成を目指しています。

 

 

京成電鉄

京成線は京成上野駅と千葉の成田空港駅を結ぶ本線と、5つの支線があります。

どちらかといえば、ローカルエリアを中心に沿線が伸びており、非常に生活感のある路線です。


出典:京成電鉄

①沿線の特徴・主な路線

京成線といえば、上野駅と成田空港駅間を最短44分で結ぶスカイライナーが有名ですが、モーニングライナーとイブニングライナーの名称で本線経由の特急も運行されています。

また本線以外にも個性的な線が多く、日本で一番短い鉄道と呼ばれる2駅のみの東成田線や京成高砂・柴又・京成金町の3駅のみで構成される金町線は下町の風情が感じられる沿線としてファンが多いです。

 

②主な開発エリア

昭和レトロな空気感が漂う京成立石駅など沿線の開発が進む中、2020年に再開発を終えたのが柴又です。

映画「男はつらいよ」でおなじみの京成柴又駅ですが、再開発によりその景観も変貌を遂げました。

景観保護の観点からも様々な物議を醸した開発ですが、2021年現在は飲食店は取り壊され、商業施設がオープンしました。

 

③再開発エリアの主な商業施設やビル

「柴又駅前店舗」と称された小規模施設が順次オープンしました。

計画段階では2階建ての施設となる予定でしたが、景観を損ねるとの声が多く上がったため、一部を2階建てとして再検討されました。

テナントのひとつ大手コンビニチェーンのファミリーマートの店舗も景観保護の観点からコーポレートカラーであるグリーンやブルーを使用せず、ブラウンの看板を掲げて営業しています。

京成立石など古き良き時代の面影を残す街も多く、再開発に難色を示す層が多いこともうなずけます。

 

 

まとめ

大手鉄道会社による開発は世間に広く認知されているものが多く、よくご存知の方もいるでしょう。

都市開発の得手、不得手は鉄道会社にもよりますが、開発コンセプトや進行の仕方は街ごとに多岐に渡ります。

トータルで見たときに地域の特性を上手く活かした開発もあれば、明らかに失敗とわかるものもあるでしょう。

とはいえ開発が成功しているかは、個人の主観も入るところなので一概に評価が下せません。

今までも都市開発を進め、郊外でのライフスタイルも提案してきた大手鉄道会社ですが、都市の在り方が見直される中、今後どのような開発事業を展開していくのでしょうか。

新たな時代における鉄道会社の開発動向に注目です。

 

NEWESTハイッテ最新居抜き物件

MAIL MAGAZINE

メールマガジン登録

新着の居抜き物件やオフィス移転の参考になる情報をお届けします。