シガーソケットにIoTデバイスを差し込むだけで、自動車をコネクテッド化し、そこで収集したデータを利活用したサービスを開発・提供している株式会社スマートドライブの代表取締役 北川烈様にインタビュー。
起業までの経緯や、今後の展望、オフィス戦略に至るまで幅広くお話をお伺いしました。
1 モビリティデータを活用したサービスとは
株式会社スマートドライブ 代表取締役 北川烈氏
ハカドル編集部:今日はよろしくお願いします。まず、スマートドライブはどんな事をしている会社なのか、改めて伺ってもよろしいでしょうか?
北川氏:よろしくお願いします。
スマートドライブは、「移動の進化を後押しする」をビジョンに、グローバルで最も利用されるモビリティデータプラットフォームを目指して大きく3つの領域の基盤を作り上げています。
あらゆる移動体のセンサーデータを収集する「データインプット」、収集したデータの利用価値を高める「プラットフォーム」、 これらのデータを活用しサービスを創出する「データアウトプット」の各領域について、一気通貫した事業を展開しています。
ハカドル編集部:具体的にはどのようなサービスがあるのでしょうか?
北川氏:シガーソケットに弊社のIoTデバイスを差し込むだけで、自動車をコネクテッド化し、そこで収集したデータを利活用したサービスを開発・提供しています。
toB、toC、双方のサービスを提供しており、toB向けには「SmartDrive Fleet」というサービスを提供しています。これは、IoTデバイスで集取した様々なデータを元に、リアルタイムに車両の位置を把握し指示を出したり、訪問件数や運行ルートを改善させる活動の最適化をします。他にも専用デバイスが「G(重力)」の向きや強さを可視化することで、危険運転の度合いや運転のクセを可視化でき、事故削減に活かしたり、といったことができます。
BtoBtoCでは「SmartDrive Cars」というサービスを提供しています。専用デバイスが収集したデータを元に、安全運転をしたドライバーへ「SmartDriveポイント」が付与され、コンビニや店舗で商品と交換ができるギフトチケットへの交換ができたり、走行履歴や行動履歴からお得なクーポンなどの情報が届く様々なキャンペーンが用意されています。主にカーディーラーや自動車メーカー、保険会社でご利用いただいております。
また、toC向けには「SmartDrive Families」というサービスも提供しています。これは、今どこを運転していて、急ハンドル・急加速・急減速がどれくらいあるのかといったデータを可視化することで、本人だけではなく家族みんなが運転状況を把握できるサービスです。例えば高齢者の方の運転の運転診断スコアが低くなってきたら、運転免許証の自主返納を家族が促すなどといったことができます。
2 起業に至った経緯
ハカドル編集部:ありがとうございます。そんなモビリティ領域で事業展開されている北川さんですが、元々この領域で起業しようと思っていたのでしょうか?
北川氏:この領域で起業しようと思ったキッカケは、慶応大学3年生の時にボストンに1年間留学した際の経験が元になっています。
その時の知人が卒業後にGoogleやTeslaで働いていたのですが、自動運転や電動化などの領域で活躍しているという話や、実際に自動運転車やテスラの車に乗らせてもらう機会を通してマーケットの盛り上がりを肌で感じるようになりました。その際に自動運転が実現する社会がかなり早めに訪れるのではないか、と思うようになったんです。
こうした経緯でモビリティ領域を事業テーマとして選びました。その中でも特に、全ての車がインターネットにつながる基盤を作ることは、将来的な自動運転の普及に必要不可欠な要素だと考え、事業をスタートさせました。
ハカドル編集部:他にもボストン留学から学んだことや影響を受けたことはありましたか?
北川氏:そうですね、最先端のデジタル研究拠点であるMITメディアラボに入り浸るチャンスがあったのですが、当時20歳ぐらいの学生が壁の向こうを見る技術を研究していたりして、それこそ映画『マイノリティー・リポート』のようなフィクションかと思う世界で……
そんな圧倒的な天才を目の当たりにしたことで、そういう天才たちと競ってゼロから物を生み出すよりも、優れたものをきちんと社会にフィットさせるということが、私がバリューを出せるところだと思いました。
そこにいた天才たちは実証実験よりも基礎研究、みたいなイメージだったので、私は0-1を作るすごい人がもっているものを世の中に広める手助けをする、みたいな。
ハカドル編集部:天才たちを目の当たりにして、そこで敵わないと思って歩みを止めるのではなく、天才たちとの棲み分けをしっかり考えた上で、次のアクションを起こしたんですね。
北川氏:そういう考え方は、自分の中にあるのかもしれません。
よくこの領域で事業をしていると、大企業と競合になったりしないのか?と聞かれます。ただ、僕たちは、非常に狭いある領域に深掘りして特化する必要がありますが、例えばGoogleさんがこの領域にまで特化する必要はないですし、この分野での勝負であれば負けないと思っています。
彼らはモビリティだけでなく他の領域にも広く使われるものを作っていくべきで、僕らは課題解決に向けて特化したものを作っていく方向になると考えています。
ハカドル編集部:なるほど、天才たちの棲み分けと同様に、大企業との棲み分けもしっかり考えられているんですね。
3 スマートドライブのチーム作り
ハカドル編集部:スタートアップにとって事業を進めていくためのチームが何より大切だと思うのですが、チーム作りで意識されていることはありますか?
北川氏:事業の立ち上げ期は、一般的には営業やエンジニアを優先して採用することが多いと思うのですが、うちは変わっていて、1人目に採用したのがデザイナー、2人目がデータサイエンティスト、3人目が人事でした。
誰もプロダクトを作れない。笑
「将来、絶対必要になるところ」から埋めていきたいと思ったのです。プロダクトをどういう世界観で作っていくのかを表現できるデザイナーだったり、そこから集まったデータを解析するデータサイエンティストだったり、良い人材を仲間にしていく人事というのが、今後何百人という組織になった時に一番大事なところだと思い、世界観を伝えて来てもらいました。
今は、80名ほどの社員で、年上のメンバーが圧倒的に多いです。「社長と従業員」というよりフラットというか、僕としてはむしろ「助けてもらっている」「僕にできないことをやってもらっている」という感じがあります。世界観に共感してくれて、「ちょっと助けてやるか」という感じで良い人が集まってくれていると思います。
また、弊社はエンジニアリングで扱う技術領域が幅広いので、「技術の幅を広げたい」といった志向性があるエンジニアには興味を持ってもらいやすいのと、交通事故の減少や、渋滞緩和といったリアルな世界に社会的な貢献ができるところも刺さっているようです。
最初はヘッドハンティングやエージェントを利用させてもらい採用していたのですが、社員数が20-30人になった辺りからリファラルが機能し始めたように感じます。リファラルで様々なバックグラウンドを持ったメンバーが集まってくるようになりました。
Google、CyberAgent、GREE、 カヤック、Recruitなどのいわゆるインターネット業界からきているメンバーもいれば、車載機、モバイル端末メーカー、半導体、宇宙事業などの業界出身のメンバーもいて、IoTならではの幅広い顔ぶれのメンバーが揃ってくれています。
4 コミュニケーションを重視したオフィス観
ハカドル編集部:御社のサービスが多様な背景を持つチームで作られているのがわかりました。ありがとうございます。
そんなチームメンバーが、働く場所・空間にもこだわったと伺ったのですが、オフィス作りに際し、どのような点を重視されたのでしょうか?
北川氏:立地と共用部と執務スペース、それぞれを意図を持って設計しました。
まず立地ですが、お客様が東京駅付近にオフィスを構えていらっしゃることが多いので、ご来社いただきやすいように日比谷という立地を選びました。
そして共用部ですが、ご来社いただいた際に気持ちよく弊社メンバーとミーティングしていただきたく、広くオープンな共用部、ミーティングスペースを意識して設計をしてあります。この共用部は、弊社メンバーの交流の場にもなっています。フリードリンク制にしていることもあり、コミュニケーション促進に一役買っているように思います。
最後に執務スペースですが、オープンな空間とは別に、集中できるブースを用意してあります。
ここで深い集中を要する作業がはかどるように設計しました。
建物の外観よりも内装を重視するオフィス観を持っていまして、気持ちよく働ける空間から良いサービスが生まれると思っています。
ハカドル編集部:天井も高く、窮屈さを感じないオフィスにもなっていますよね。
5 スマートドライブが見据える未来
ハカドル編集部:スマートドライブのこれからについて伺いたいのですが、今、日本も新型コロナウイルス感染症の影響を受け、人々の生活に多大な影響を与えていると思います。そんな中、これからどういう風に事業を展開されていこうと考えていらっしゃいますか?
北川氏:基本的には、やりたいこと・実現したい世界に変わりはありません。
世界では年間130万以上の人が毎年交通事故で亡くなっています。また、国交相は日本における交通渋滞の経済損失額を約12兆円と試算しました。
我々のモビリティデータプラットフォームを広げていく過程で、これらをいかに減らしゼロに近づけていくことができるか。それは社会にとって、私達にとって、大きな挑戦だと考えています。
「テレマティクス」「電気自動車」「自動走行」というテーマを軸に、今後、自動車の世界が大きく変わっていくと思っています。その領域で、私達スマートドライブが社会課題を解決していけるよう、利用可能デバイスを増やし、東南アジアを始めとした海外での事業展開を行い、スマートシティ内で弊社のサービスを使っていただくなどの構想を描いています。
ハカドル編集部:最後に、そんな未来を描いている中、Afterコロナ、Withコロナになった時、どういう働き方をしていこうとお考えでしょうか?
北川氏:弊社に限らず、企業が置かれている環境は大きく変わっていくと認識しています。
売れる製品・サービスは「Nice to Have」ではなく、「Must Have」なものへと変わっていきますし、働き方も、従来のオフィスへの出勤や顧客訪問といったスタイルから、テレワークやオンラインミーティングも定着していくと想定しています。
また、売上げ成長率や革新的な新規事業、個々人のパフォーマンス向上重視から、持続可能性があるのかを重視する方向性になると思います。
リモートワークが当たり前になってくると、社員のメンタルのケアや働きやすさなどについても、今まで以上に考えなくてはいけないでしょうね。ただ、そういった大きな変化もポジティブに捉えようと話をしています。今までのやり方を見直し、より筋肉質な体制で、お客様の課題解決を中心に置いたカスタマーセントリックなサービスにブラッシュアップできる良い機会としたいですね。
ニーズにスピード感を持って対応して、パートナー企業とも連携しながら、新しいサービスを創出して行く必要があると思っています。
Afterコロナ、Withコロナのタイミングでは、相対的に周りよりも早く自分を、会社をアップデートして、相対的に差をつけるチャンスだと考えています。
編集後記
インタビューをしている際、北川さんの柔らかな物腰と、その雰囲気とはギャップのある鋭い眼光がとても印象的でした。スマートドライブ社が見据える社会では、どんな未来が待っているのかとても楽しみです。
北川さん、お時間いただき誠にありがとうございました。
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