VCインタビュー

「メガバンク時代に何百社と向き合った経験を活かして」VCインタビュー#11 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社(ITV) 諏訪 博俊氏

2022.01.20

VCインタビュー第11弾は伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社(ITV)、諏訪 博俊さんです。

銀行員としてのキャリアを持つ諏訪さんがVCになった経緯や出資のポイントについて伺いました。

 

<プロフィール>

諏訪 博俊(すわ ひろとし)氏

伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社(ITV) プリンシパル

2010年に株式会社みずほ銀行に新卒入社し、みずほキャピタル株式会社への出向を経て、2019年に伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社(ITV)へ入社。

銀行員時代の経験を活かしながら、幅広い領域で支援を行う。

 

【伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社(ITV)】

 

<インタビュアー>

株式会社IPPO 山岸 耕

yutori、ペイミー、AppBrewといったスタートアップのオフィス移転を創業期から手掛ける。

 

1.ITVについて

1−1.特徴・強み

当社は2000年創業の独立系ベンチャーキャピタルです。伊藤忠商事の子会社でありながら創業から一貫して独立運用しているのが特徴ですね。対外的にはCVCと思われることが多いのですが、独立系のファンドとして運用しています。

 

株主は伊藤忠商事、伊藤忠テクノソリューションズですが、ファンド自体のLPは、大半が伊藤忠グループ以外の外部の方に入っていただいていて、1号ファンドから直近の5号ファンドまで継続しています。

 

一方で、CVC的な側面も持っていて、投資先の営業支援や事業開発支援として伊藤忠商事の各カンパニーや子会社をITVが架橋となって積極的に巻き込んでいくこともします。もちろん、伊藤忠グループが介在する必要がなければ、他の商社を使っていただいても問題はないです。あくまで必要であれば伊藤忠グループのアセットをフル活用するイメージです。

 

——実際に伊藤忠グループとして協力した事例はありますか?

私が入社する前になりますが、株式会社ラクスルの事例ですね。

当時ラクスルさんは、印刷工場さんのリソースを集約してビジネスを展開していたのですが、当然印刷資材自体のリソースも集約した方が、利益率がよくなるはずです。ラクスルさんとして印刷資材をより良い条件でどうやって仕入れるかという課題があった時に、伊藤忠グループの「伊藤忠紙パルプ」という紙の卸商社を繋いだ事例になります。伊藤忠紙パルプにとってもスタートアップとの取引に不慣れ中で、我々が間に入ることで上手く取引が始まり、良い条件で取引ができましたし、それがきっかけとなり伊藤忠紙パルプにとっても将来的には得意先になってもらえたというのは象徴的な取り組みだと思います。

 

よく投資先から「株主に他の商社さんがいるけど大丈夫ですか?」と聞かれることが多いのですが、そこは出資する際のポイントとしては全く問題ないです。

ITVは独立系VCとしてファイナンシャル・リターンが投資基準になるので、事業的なシナジー有無は特に必須ではありません。

 

——ITVのメンバー構成について教えてください

当社はCVCと独立系のハイブリッドな側面があるので、投資部メンバーもハイブリッドな構成になっています。伊藤忠グループ出身のメンバーと私のように外部からきたプロパーで、半々くらいの割合で、8名体制になっています。

 

1−2.投資先のターゲット

シリーズA前後のアーリーステージをメインに投資を行っています。

チケットサイズで言うと幅はあるのですが、1〜5億円が多いです。

リードとフォローについてはケースバイケースで、リードが取れる場合にはリードを取らせていただいています。割合的にはリードとフォローで半々くらいです。

 

また、B向け、C向け問わず投資領域は幅広いです。ただ、社名自体も伊藤忠”テクノロジー”ベンチャーズですのでITは絡んでいて欲しいです。

当社のミッションでもある「新規産業を創出して社会に変革をもたらす」ことに重きを置いて投資活動をしています。

 

過去の代表的な投資先で言うと、株式会社メルカリ、ラクスル株式会社、株式会社クラウドワークス、株式会社ユーザーベース等があります。

現在進行しているところだと、株式会社ミラティブ、株式会社カケハシ、株式会社Cure App、InstaVR株式会社、株式会社エニキャリetc・・・です。

 

——事業の領域の中で注力したり、意識しているところはありますか?

特にフォーカスしているような領域というより、流行りものやバズワードだけ追うってことはないです。業界のトレンドを見ながら、それに対してしっかり取り組めているスタートアップや、業界構造を変えるとかイノベーションを起こそうとしているかというような、本質的な価値を意識しています。

 

1−3.出資する際のポイント

——出資する際のポイントを教えてください。

起業家や経営陣がその領域、業界に対して知見や知識を持っているか、原体験があるかはよく議論するポイントです。

対面する市場の問題・課題・ニーズの解像度が高いところに投資をするケースが多いです。

 

——専門領域にいた人が独立する人が多いのでしょうか?

そうですね。当社の投資先ではそういった方も多いです。

 

それが強み・コアコンピタンスにつながると思います。他社・競合・代替サービスと比較した場合に何が自社の強みなのかというところを明確化できていたり専門性があると投資しやすいです。

 

また、ユーザーの課題解決をどうやっているのかも注目しています。

シードの場合はプロダクトがないケースが多いのですが、シリーズAくらいになると一定プロダクトができています。PSF(Problem Solution Fit)は達成できているか、どうやったらPMF(Product Market Fit)するかを議論しています。

 

——ミッションにもある「事業計画に投資しない」はキャッチーですが投資判断の際にも活きているところはあるのでしょうか?

あると思います。

結局、事業計画は日々変化しますし、ターゲットが変われば、もちろんブラッシュアップも必要になります。事業計画ありきで投資したところで変わるリスクが大きいと思います。ただ事業計画や将来の絵姿を達成できうる”人(チーム)”なのかは重要だと思います。

 

——数字だけ判断ができない分、ユーザー課題解決の達成ができそうかどうかを判断するのって難しそうですね。

そうなんです、難しいんですよね…。

私自身、この点については日々苦労していて、私がこの人たちならいける!一緒にやりたい!と思っても、他の投資メンバーに言語化して伝えるのは難しいです。

 

その業界に対する知見・知識・課題をなぜ知っているか、なんでこのタイミングで事業を始められたのか、その解像度が高い人(チーム)に投資したいと思います。

 

——出資が決まったあとはどのようにスタートアップの支援をしていますか?

当社は必ずパートナー制を組んでいるので、パートナーとプリンシパル(担当者)がついて2名体制になることが多いです。

私の場合は、ITVとしてどこで支援できるかどうかというのを探っていきつつ、今までの法人営業の経験を活かして、一緒に営業に同行したり、顧客紹介したり、その他事業支援のために奔走するケースが多いです。事業計画を一緒に作ることもありますね。

 

——伊藤忠グループと連携する際には、グループ内にスタートアップに対応する担当がいるんですか?

伊藤忠商事でもIT系とかヘルスケアに投資しているところがありますし、各カンパニーの担当と連携しています。

またスタートアップにとってできることはしたいので、仮に投資先でなくても、伊藤忠グループとの相性が良ければ繋いでいます。

 

——投資先でなくても繋いでいるってすごいですね。困ったら諏訪さんに相談すればなんとかなるんじゃないかと思えます(笑)

そう思ってもらえると嬉しいです(笑)

弊社は年間10件投資するかしないかなので、少しでもスタートアップの役に立ちたいという思いがあるので、できることなら繋いでいきたいですし、そのスタートアップが大きくなるのであれば嬉しいので泥臭くやっていきたいですね!

とりあえず私に相談してほしいです(笑)

 

2.諏訪さんについて

2−1.VCになったきっかけ

——前職は銀行員だったと伺ったのですが、VCになったきっかけを教えてください。

銀行員時代は法人新規担当で大企業の新規開拓がメインミッションだったのですが、簡単ではありませんでした…。

当時の大企業の基準として売上資産基準の他に上場基準もあったのですが、既に上場している企業を開拓するのは難しいと考えていたんです。

それであれば、上場前のスタートアップ企業を開拓した方がいいのでは?と思い開拓方法を変えました。その中でVCの存在を知り、たまたま縁があってみずほキャピタル株式会社に出向しました。

 

銀行員時代があったおかげでVCのことを知ることができましたね。

 

——最初に銀行に就職した理由はありますか?

当時は漠然と金融業界に入りたいと思っていました。

「金に色はない」とよく言われますが、一個人として信頼されて、企業の役に立ちたいと思う中で、”銀行員”という職業に魅力を感じて新卒でみずほ銀行に入社しました。

 

——銀行員時代の経験がVCになって役に立ったことはありますか?

VCは何を支援してもいいので幅広い支援を行っているのですが、銀行員時代に培った法人営業スキルとかエンタープライズ・中小企業への泥臭い営業は役に立っていると思います。

また、BS・PLについての知識は本で読めばわかるものですが、実体験として何百社として見てきたので、銀行がいくらくらい貸せるかという肌感覚は持っています。

 

業種や業界の平均的な利益率なども肌感覚があるので、スタートアップがやろうとしているビジネスがこのくらい目指せるとか、これは異常値とかのアドバイスができるのも役に立っています。

 

銀行は融資するだけのところじゃないので、銀行とどんな取引ができるのか、どのタイミングで銀行に声をかけたらいいかのアドバイスもできますね。

 

2−2.注目している業界

——最近注目している業界はありますか?

たくさん注目の領域やバズワードもあると思うのですが、個人としては日本国内でも解決しないといけない課題はたくさんあると思っていて、その中でも介護領域・物流領域は注目しています。

 

2−3.今までに担当した代表投資先

——諏訪さんが担当した投資先でのストーリーを教えてください。

たくさんあるのですが、2社紹介させていただきます。

まずは株式会社GiverLinkです。

介護領域で投資先を探している中で、Twitterで出会いました。

 

最初は介護領域について教えてくださいとDMをして、快く了承いただいて連絡をとり始めました。

元々GiverLinkはVCからの資金調達を考えていなかったのですが、資金調達をして一気にアクセルを踏みましょうと提案をして先方のマインドも変わって行きました。

最終的には、ITV主催の起業家育成プログラムに参加してもらい半年間伴走した後に投資しました。

 

2社目はファストドクター株式会社です。

みずほ銀行時代からの付き合いで、当時は銀行員としてできる範囲でサポートしていました。他VCさんから出資を受けたのを知っていたので、どこかのタイミングで出資をしたいなと思っていたのですが、今回ついに出資をさせていただきました。

昔から応援していた企業で、数年越しに支援ができたのは嬉しかったですね。

 

ファストドクター株式会社は出資後に伊藤忠商事との連携もできました。

コロナ禍で自治体からのバックアップ事業として、コロナ患者のアフターフォローを受託していたのですが、コロナを患ってしまうと、療養中に外出もできず、食糧の調達もで困難となることを知りました。そういう人たちを助けたいと相談をもらったことがきっかけでした。

そこで伊藤忠商事が懇意にしている各メーカーさんを繋いでファストドクターに商品提供してもらって、食糧を患者様に無償で提供するプロジェクトを実施しました。

様々な企業や各カンパニーの連携が必要な中でスピード感を持ってプロジェクトがスタートできたことは本当に良かったです。

 

3.今後の展望

——今後、どのような起業家・経営者の方と会いたいですか?

自身の原体験をもとに社会や業界を変えようとしている、気概のある起業家の方にお会いしたいです。

TwitterなどでDMを送らせてもらったり、出資されているVCさんがいればそのVCさん経由で紹介いただくこともあるので、いろんな繋がりを築ければと思います。

 

——他のVCさんともよく絡んでいるイメージなのですが、他社キャピタリストの中でどんな話をするのでしょうか?

プライベートなくだらない話から仕事の話まで幅広くしています。

最近注目している業界や起業家、ファンド運営についての情報交換をして、投資先にも活かせるものがないかウォッチしていますね。

 

4.編集後記

とりあえず相談すればなんとかなるかも…?と思わせるような、諏訪さんの魅力をたくさん伺えました。

Twitterでは飯テロツイートなど諏訪さんの面白い一面やお茶目な一面も覗けるので、ぜひご覧ください。

 

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