インタビュー

「バックオフィスが整っている会社は不思議と数字がきれいに伸びていく」VCインタビュー#9 East Ventures 梅園 アマンダさん

2020.12.28

VCインタビュー第9弾はEast Venturesの梅園 アマンダさんです。

バックオフィス支援を中心とした日々の業務、バックオフィスを整えることの重要性などを聞いてみました。

梅園 アマンダ(うめぞの あまんだ)
East Ventures アソシエイト
2018年7月に日本でのポートフォリオの運用をサポートするアソシエイトとしてイーストベンチャーズに入社。
バックオフィスサポート中心としながら、YJキャピタルとイーストベンチャーズによる共同アクセラレータプログラムであるコードリパブリックの管理も担当。

インタビュアー
株式会社IPPO 山岸 耕
yutori、ペイミー、AppBrewといったスタートアップのオフィス移転を創業期から手掛ける。

1 East Venturesでの業務に関して


——普段の業務内容について教えてください。

梅園さん:East VenturesのVCとして出資も行うのですが、メインは出資先のバックオフィスのサポートを行っています。

それをするのにも理由があって、投資した後に投資先の会社の経営環境を放置してしまっているVCさんが多いかなと思うんです。実際中を見てみると経営者の方が多忙すぎて、納税や給料支払いなども滞っているようなケースもあって、それが原因でエンジニアの方がいなくなってしまうということもありました。

経営体制がうまく回っていないのを見て、「そんな状態だとビジネスがグロースしないのではないか?」と思い、この1年はバックオフィス支援を強化してノウハウを蓄積していました。

VCとして求められる成果の最適解が「出資をする」ということのみであれば、現状の私は少し違うのかもしれません。ただ「お金は出すからあとは頑張ってね」という冷たいことはしたくなくて、出資もするし、バックオフィスもしっかりきれいに流れるような体制を作りたいと思っています。そのため他のVCさんが話すことと私が話す内容はかなり違うかもしれません笑

 

——VCインタビューでもバックオフィスに主眼をおいたお話は初めてです。具体的にどのような業務やサポートを行なっているのでしょうか?

梅園さん:いわゆるVC的な動きであれば弊社はパートナーが3人いるのですが、その中の1人のアシスタントとして活動しています。

バックオフィスサポートとしては出資先の税務周りをサポートすることが多いですね。もし税理士さんを雇われていない場合は税理士さんを紹介したりしています。例えばある会社のケースであれば「月次資料の作成を怠っていたので、資金調達を逃してしまった」ということもありましたし、他にも「源泉徴収の存在を知らず結果として問題になってしまった」など、細かいトラブルがたくさん発生してしまうんです。そのような税務面トラブルが発生しないよう、税理士さんが月次決算を出せているかどうか確認しつつ、その会社の売り上げやバーン、残キャッシュがあるのかなどなども見ています。

場合によっては、経理担当者が見つかるまでの間、給与振り込みを行うこともありますね。そして必要であれば税務署と電話して解決策を模索したり、会社の人数規模が少なかれば年末調整をしたり、確定申告のために税理士さんを繋ぐなど地道なサポートをしています。

バックオフィスは2、3ヶ月税務のことをかじっても全体感は掴めなくて、1期2期ぐらいはちゃんと見ないと分からないんです。事業がどんな動き方をして、お金はどのように動いて、どんなハプニングがあって、そんな時はどんなことをするのか等も今では蓄積できているので、バックオフィスのサポートをスタートしてから日々非常に勉強になっています。

1番最初は「自分はまだ全然分からないけど起業家がうまくまわせていないポイントを助けたい」と思って起業家の方にサポートさせてくれないかと頼んだんですが、それが縁となりサポートする会社が2社3社と増えていく中でナレッジが蓄積されていきました。

スポットで入ることもありますし、ずっと入ってる場所もありますね。

 

——肌感覚としてでいいのですが、何割ぐらいがバックオフィスがうまく機能していないと感じられますか?

梅園さん:なかなか回答が難しいところですが、大なり小なり機能していない点は多いかなと思います。「ちゃんと月次決算を出せてるシード起業家」という点で言えば、その母数はそんなに多くないのかなと感じます。特にシード起業家の方に出資をする場合は学生さんであることも多いんです。そうなると税理士さんや社労士さんの重要性に気づくきっかけが今までないことも多く、そのため当然その業種の方との繋がりがなかったりしますし。

 

——バックオフィス支援を行う場合、それらの企業に対してどれぐらいの深さの関わりをするのでしょうか?

梅園さん:バックオフィスの仕事って会社のステージによって携わらないといけないポイントが大きく変わるんです。

初期であれば先ほどお伝えしたような細かい税務面だったりするのですが、企業の成長が進んでくると「産休の制度ってどうすればいいの?」とか「雇用保険入っていなかったけど失業保険どうすればいいの?」などの具体的な組織課題に変わってきたりします。そのため企業の大きさや課題によってサポートする内容や深さが変化するので、それに合わせて柔軟に対応にできるよう努めています。

——「事業を進める以外に会社として準備しないといけない重要な物事」のサポートをされているというイメージですね。

梅園さん:そうですね。例えば、今まさに資金調達を頑張ってる中で、追加で持続化給付金の書類も用意しないといけない、でも決算しっかり行なっていなかったから必要な書類がない、そうなると税務署行って資料をもらわないといけないよね、となるのですが起業家が資料を用意したり税務署に行ったりする時間はなかなかないんですよね。

そのような事務作業のプライオリティはどんどん下がっていってしまいがちで、社内で経理まわりに信頼が置ける人がいない場合は起業家に変わって対応するといった感じですね。

 

——VCさんとスタートアップ経営者の関係性ではちょっと相談しにくい事、本来だったら言えないような事はバックオフィスに精通している梅園さんだからこそ相談できる点もあるんでしょうか?

梅園さん:毎月会って会社の状況を報告してくださいと言うと、良い面の報告が多くなりがちなんですが、定期的に細かい内容で連絡をとっているといつしか起業家の中から「〇〇のVCはこうだったよ」などの話や、それに伴う相談を聞くようなことはあります笑

バックオフィスのサポートは単発で終わりの仕事ではなく、細かいタスクが継続的に続いていくため接点が多くなりやすいということもあり、起業家のビジネス状況以外にもメンタル面を間近で見れる点も関係があるのかもしれません。

それ以外にも仲間の中でどんなことがあったとか、インフォーマルな話題をけっこうオープンに話してくれる方も多いです。なのでけっこう近い関係性で話はできているのではないかなと思いますし、起業家視点の話を聞けるのは大変勉強になります。

 

2 バックオフィス支援をスタートさせた経緯


——梅園さんがバックオフィスサポートをスタートさせた経緯を教えてください。

梅園さん:複数のエピソードが重なるんですが、元々弊社で働いていたメンバーが独立して自分の会社を始めたんです。それで自分の会社のバックオフィスを手伝ってくれないかと声をかけていただいて。それと同時期に他の会社からも税務面で手伝ってほしいと声をかけていただいたんですが、そこは非常にしっかりしていて、とてもバックオフィスがきれいに回っていたんです。

そんな中、また別の会社でサポートが必要になり、会社の内部を見たらかなり大変な問題がたくさん発生していたんですね笑。そのような事態はその会社だけに限った話なのかなとも思ったのですが、実は他の会社も程度の差はあれど同じような状況だったんです。

知人の会社から然るべきタイミングでバックオフィス支援の声をかけていただいたこと、バックオフィスが上手くいっていない会社を複数社見たこと、かたや非常にバックオフィスがきれいに整っている会社を見たことなど色々なきっかけが重なったんです。そしてそのバックオフィスが整っている会社は不思議と数字がきれいに伸びていくんですよね。

それを見て「あ、これバックオフィス重要だな」と思いまして。

いろいろなバックオフィス環境に触れ、バックオフィスが上手くまわっていないからダメになってしまう会社も目の当たりにしているからこそ、「それをどうにかしてくれるVCがいないのはおかしくないか?」と思いました。

その当時は「VCとしてどのような方針でキャリアを形成していくか」などの話の時に「バックオフィスやりたい」と言っても、なんでそんなにバックオフィスやりたいの?とか、VCの面白味ないよとか、バックオフィスの何かに取り憑かれたの?とか色々言われました笑。でも個人的にはVCにいる中で事業支援をするのであればバックオフィスの重要性を無視できなかったんです。

投資をできる人や事業のアドバイスのできる人はたくさんいるのに、VC側からバックオフィスをサポートする人は少ないのでは?、それができればより出資先のサポートができるんじゃないかと思って。そこからこのキャリアがスタートした感じですね。

——なるほど。確かにスタートアップのバックオフィスって情報をどこで仕入れたらいいのか分からないですよね。

梅園さん:そうですね、でも本当は毎月何をやればいいのかって決まってるんですよ。納付すべきこととかチェックすべきこととか。慣れるのに必死でしたし、印鑑のいるものいらないものがよく分からなったりしました笑

ちゃんとやらなくても大丈夫だよってスタンスの方もいるのですが、本当なのかなと思ってそれを税理士さんに確認すると全くそんなことはなかったり。

バックオフィスの業務で常識として考えられていることを最初から綺麗にできる人はいないのではないかなと思います。バックオフィスとは言っても私は今税務回りに強くなってはいますが、今後は人に関わること、例えば労働局に出すべきものや補助金などもっと幅が広がってくると思うんです。すごい種類があって補助金も申請するのに手続きが面倒とか、誰かに相談してもお金を結構マージンをとられてしまったりなんてこともあるので、そこの整備もしたいなと。

 

——あまりバックオフィス文脈で事業の成長が語られているケースは多くないと感じるのですが、スタートアップの会社でバックオフィスを意識することで売り上げにもいい影響があるというのは確かにその通りかもしれません。

梅園さん:数字を明確にするからこそ舵を切れるし挑戦ができると思うんです。数字を知ってる上で「大丈夫」と言う人と、なんとなくしか分からなくて「大丈夫」と言う人の差ってすごく大きいと思うんです。

バックオフィスをしっかり運営することで、その会社の体制が抽象的ではなくて数字で具体的に見えるようになるんですよね。本来それが普通であるべきなんですが、学生から起業したパターンだと月次決算を重要視していないことが多い気がするんです。あくまで肌感覚なのですが。

このようなケースでよくあるのが「会社としてどうあるべきかというものが想像できていない段階」であることが多いと思うんですね。30歳ぐらいの社会経験がある人や、大企業でのビジネス経験がある方の場合だとなんの数字を追いかけるべきかという感覚がしっかりしている気がします。そのような方が起業した場合だと「毎月月次決算を出さないと会社の方向性がどうなってるか分からないよ」という事を理解しやすいのですが、そうではない場合は年に一回の決算の数字しか追えていないことが多いかもしれません。そうなると「実は年間を通してみると思っていた以上に諸経費がかかっていた」などもっと早く気づけることだったのに、期の終わりまで気付けていないことが多かったりするんですよね。

「年間でそれぐらい消費したか」よりも「毎月どれぐらい減っていってる」ということを数字で見えるようになっていないと調達などのアクションプランがぶれてしまいます。ですが「数字を見るほど余裕がなくて、3ヶ月おきにピボットしてるけどうまくいかない、どうしよう」となってる方に数字を突きつけるのって本当に怖いことなんですよね。

売り上げは立っていないけどエンジニア手放したくない、でも残金は減っていくという現実を見るのは怖いんですけど、でも向き合わないと方針が立てられないし、業務委託の方に「調達したらお金払うから今は待ってて」的な口約束をして結局払えないとなってしまう可能性もありますし。口座引き落としのカードとかの支払いは忘れないけど、取引先の請求書や業務委託の人件費、家賃を払い忘れて信頼関係を失ってしまったりとか。

とは言っても経営しながら事業も進めバックオフィスもこなす、といったマルチタスクをクリアできる人はそうそういないと思うので、経営者が信頼できる誰かがバックオフィスをしっかり行うことが大事だなって思います。そうすることで経営者がすごく事業に対して専念できますし、心配事も少なくなりますし。

——資金調達の次の動きなどおっしゃる通りですね。残金で困っている方は確かにいますよね。

梅園さん:そうなんですよね、逆算ができるという意味でも数字を毎月出すということは大事なんだなって思います。

支援した先の会社を見ていても、ちゃんと毎月数字が出ることによって、目標や見え方、次はどの数字を取りに行くべきかなどが明確になっているので、数字を明確にすることは本当に大切なことなんだなと感じます。

これはVCにもよるんですが年に一回の決算の資料しか見れないこともあるんです。でもその内容が「毎月ほとんど売り上げがないけど年に一回巨額の売り上げがあって売り上げが立っていたことになっている」ような場合も考えられるわけですよね。なのでちゃんと月次決算を見ないとどんな状況なのか分からないんですよね。

 

 

3 支援を行う中で苦労したことや今後の展望


——実際サポートを行なっていく中で苦労したポイントなどはありますか?

梅園さん:私は大学では専門外のことをしていたので、簿記もいまいち分からないところからスタートしたんです。税理士さんであれば知っていて当たり前な専門用語がわからなかったりしたことも苦労した点でした。メンタル面でいうとそれらの専門用語がわからなかった時に、ある時税理士さんにそんなこともわからないのかとすごく怒られたことがあったんですが、それは辛かったですね笑

インターンの時などはリサーチしたりレポートを書いたりして知識を培って頑張ろうとしていたのですが、バックオフィスに携わってからは朝から役所に行ったり、印鑑を1つ間違えたらやり直しになったり、受理されたはずのものが取り消しになったり、税務署ごとに方針が違ったり、今までと働き方が変わったのも大きかったですね。

総括すると最も大変だったのは税理士さんとの相性ですかね。それは起業家へも影響してしまって、結局起業家が数字嫌いになってしまうなんてこともあるので、起業家が相性のいい税理士さんや弁護士さんを見つけるということは本当に重要だなって思います。

 

——投資に関しては今後どのように考えてらっしゃるのでしょうか?

梅園さん:私の中では、今後自分が投資したいと思える起業家と出会えても、そもそも会社がどう機能しているのが正解か知らないと自分も適切なアドバイスができないなと思ったのでバックオフィスを培ってきました。でもバックオフィスでの貢献といっても自分のキャパや時間もあるので全てを見れるわけではないんですよね。そのためEast Venturesにちゃんと貢献できるのかなという不安もあったんです。 

今は起業家を助けたいという想いが大きいですが、VCになったからには自分も0から誰かを見つけてその熱意や野心に共感してビジネスを大きくした、という自信を持ってみたいなとは思っています。

VCってお金を入れるだけじゃないというサポートはいい付加価値になるなとは思うので、自分は間違っていないのかなとは思っているものの、VCとしての焦りは常にあります。

 

 

編集後記


VCに所属しながらも出資以外のサポートも対応できる梅園さん!ハンズオンにサポートし信頼関係があるからこそできる業務だなと改めて理解できたインタビューでした。

また、梅園さんのキュートで明るい人柄の良さが出資先からも好印象な理由がとてもわかり、お話ししていてこちらも思わずニコニコとなりました。

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